神奈川県厚木市にある日蓮宗満星山「戒善寺」で友人の一周忌があった。
癌が発見された時は、既に末期。
直ちに告知を受け、カウントダウンが始まった残り僅かの余生を淡々と、懸命に生きた。
身体に穴を開け、そこから抗がん剤などを流し込みながら、殆ど苦痛や動揺の表情を見せず、以前と変わらぬ様子で、事務仕事の勤務をギリギリまで続けていた。
彼は普段、決して大言壮語するタイプではなかった。
ただ時折、やや時代がかった台詞だが、昔の兵隊さん達の苦労を思えば……みたいなことをボソボソ喋っていた。
こんな台詞が出るあたり、どちらかと言えば変人の部類だったかも知れない。
しかし、その言葉を彼は遂に裏切らなかった。
昨年の葬儀に参列した時、静かにそう思った。
一周忌を迎え、遺されたご母堂は、相変わらず頭脳明晰、記憶もしっかりとして、終始多弁で気丈に振る舞っておられた。
だが、そのことがかえって、自分より早く我が子を失った老母と、この母を遺して幽界に旅立った友の悲しみを、より際立たせているように感じた。